From 1/31 evening to 2/2 JST, this post curates 20 must-see FOSDEM 2026 sessions for embedded and IoT developers, covering AI inference, RISC-V, ESP32/Rust, Linux, BSD, and security.
相模原市で IoT 設計を受託しているファームロジックスです。
今回は、私と同様に組込系のソフトウェア技術者、あるいは組込系の日曜プログラミングが趣味の方がご興味をお持ちのイベント、FOSDEM 2026 についてのお話です。
FOSDEM ってなに?
FOSDEM とは、ベルギーで開催される、フリー/オープンソースソフトウェア開発者のための大規模カンファレンスです。FOSDEM 2026 は、日本時間で 1月 31日の夕方から 2日間にわたって開催されます。
こちらの FOSDEM 2026 公式サイトにある https://fosdem.org/2026/schedule/events/ を見ると、実に 1000 を超えるイベントが計画されていることが分かります。もちろん内容は英語ですし、全てをチェックするのは無理な話です。
そこで今回は、ファームロジックスが、われわれ組込技術者に興味ありそうなセッションを 20本厳選してみました。以下に、日本時間ベースでセッションをご紹介していますので、ご参照ください。
表中央のセッション名(▶ マーク以下)をクリックすると、セッションの原題と概要が日本語で表示されますので、ぜひご参考ください。また、リンクというところの矢印をクリックすると、FOSDEM 公式サイトのセッションアジェンダが開きます。
ファームロジックスが注目の講演 20題
| 日付 (JST) | 時間 (JST) | セッション | トラック | リンク |
|---|---|---|---|---|
| 1/31(土) | 18:35–18:55 |
llama.cpp のマルチモーダル対応:現状と今後原題: Multimodal support in llama.cpp – Achievements and Future Directions
概要: llama.cpp に追加されたマルチモーダル基盤(libmtmd)を中心に、これまでの統合・整理の成果と、サーバ連携や低レイテンシ OCR などの実例を紹介します。モデル固有だった CLI の統合、レガシーとの両立、将来の拡張(動画入力、TTS、画像生成など)を見据えた設計上の工夫が主題です。自分のプロジェクトにどう取り込めるか、貢献の切り口も示します。 |
AI基盤 | ↗ |
| 1/31(土) | 19:50–20:10 |
Beyond TinyML:MCU 推論の精度と遅延の両立原題: Beyond TinyML: Balance inference accuracy and latency on MCUs
概要: ESP32 のような MCU でも「高精度モデル」を使いたい、という要求に対し、近傍ノード(エッジ/クラウド)へ推論をオフロードして遅延を抑える構成を扱います。vAccel のような抽象化レイヤーで、アプリ側の変更を最小化しつつ異種ハードウェアを活用する狙いです。デモを通じて、実用上のトレードオフ(監視・運用、ネットワーク、遅延分布)も議論します。 |
AI基盤 | ↗ |
| 1/31(土) | 20:15–20:35 |
RISC-V で ExecuTorch をベアメタル起動する原題: Bringing up bare metal ExecuTorch on RISC-V
概要: PyTorch 系の実行基盤 ExecuTorch を、OS なし(ベアメタル)の RISC-V 環境へ持ち込む「立ち上げ」の勘所を扱います。メモリ配置、依存ライブラリの最小化、I/O とデバッグ、実機差分の吸収など、組込で現実に詰まりやすい点が焦点です。推論を「載せる」だけでなく、再現性のあるビルドや検証手順も意識した内容です。 |
AI基盤 | ↗ |
| 1/31(土) | 23:00–23:30 |
PEP 810 で CLI 起動を速くしたパン屋の話原題: The Bakery: How PEP810 sped up my bread operations business
概要: Python アプリの起動時間を支配しがちな import を、PEP 810 の「明示的な遅延 import」でどう扱うか、実務の CLI ツールを題材にデモします。速度だけでなく、読みやすさや安全性(いつ何が import されるか)を壊さずに最適化する流儀がポイントです。小さな改善の積み重ねで、現場の体感を変える、という方向性のセッションです。 |
Python | ↗ |
| 1/31(土) | 23:10–23:15 |
マイコン NPU で tinygrad / ggml を動かす原題: Running tinygrad and ggml on microcontroller NPUs
概要: MCU 級の低消費電力 NPU に、専用フレームワークではなく tinygrad や ggml のような「汎用・最適化が進んだ実装」を持ち込む価値を検討します。Google Coral などの NPU を例に、対応の難所(演算対応、メモリ制約、データ転送、コンパイル/変換)を整理します。TinyML の延長ではない「実装戦略」の話として面白い枠です。 |
AI基盤 | ↗ |
| 1/31(土) | 23:30–24:00 |
Python の GIL と API 性能:過去・現在・GIL なしの未来原題: The GIL and API Performance: Past, Present, and Free-Threaded Future
概要: なぜ GIL が長年残ってきたのか、何が状況を変えたのかを整理し、free-threaded(GIL なし)Python が性能と開発体験に与える影響を扱います。ベンチマークや実運用寄りの観点(Web サーバ等)から、スケールの上限がどう変わるか、代わりに何を意識すべきかを説明します。「速くなる」だけでは終わらない設計の話です。 |
Python | ↗ |
| 1/31(土) | 23:40–24:00 |
Dynamo で LLM サービングを高速化する原題: Supercharging LLM serving with Dynamo
概要: LLM 推論のサービングを「実運用で回す」ための仕組みとして、Dynamo の機能を俯瞰します。KV キャッシュの活用と転送、prefill / decode の分離、階層メモリ(HBM/ホスト/ディスク/リモート)管理、負荷に応じたルーティングや自動スケールなど、性能とコストを同時に詰めるための設計が中心です。推論エンジン(vLLM 等)を活かしつつ、周辺をどう組むかの話になります。 |
AI基盤 | ↗ |
| 1/31(土) | 23:50–24:15 |
smolBSD:影より速く起動する超軽量 BSD原題: smolBSD: boots faster than its shadow!
概要: NetBSD の microVM カーネル等を土台に、最小構成の OS+サービスを「高速起動・再現性重視」で組み立てるアプローチを紹介します。initrd の使い方や、必要物だけを切り出す設計、隔離された小さなサービス VM を量産する考え方が主題です。マイクロサービス基盤を OS から割り切って作る発想として刺さります。 |
BSD | ↗ |
| 2/1(日) | 00:30–00:50 |
セルフホスト LLM 運用 1 年:インフラから本番まで原題: From Infrastructure to Production: A Year of Self-Hosted LLMs
概要: セルフホスト LLM を 1 年まわして見えた「本当に効く実践パターン」を、成功と失敗の両面から整理します。ロードバランサや周辺ツールの作り込み、運用で詰まる点(監視・コスト・品質・更新)など、現場寄りの論点が中心です。オープンソースとして何を整えるべきか、コミュニティ視点の提案も含みます。 |
AI基盤 | ↗ |
| 2/1(日) | 00:45–01:10 |
Swift を FreeBSD に移植する:デーモンと踊る原題: Dancing with Daemons: Porting Swift to FreeBSD
概要: Swift を FreeBSD に持ち込む過程で出る「地味だが致命的」な課題を、移植の体験談として共有します。デバッガが十分でない段階の切り分けや、OS 依存部の洗い出し、ツールチェイン整備の現実などが焦点です。言語処理系・ランタイム移植に関心がある人に向く内容です。 |
BSD | ↗ |
| 2/1(日) | 02:40–03:00 |
OpenBSD で家庭内ネットワークを堅牢化する原題: Securing your network with OpenBSD
概要: ISP ルータ等の更新停止やブラックボックス設定を避け、OpenBSD を使って家庭内ネットワークを「自分で守る」考え方を紹介します。余っている PC や Raspberry Pi をルータ/ファイアウォールとして使う現実的な道筋が主題です。OpenBSD 標準機能を軸に、長期保守と移行のしやすさを狙います。 |
BSD | ↗ |
| 2/1(日) | 17:30–17:55 |
ESP32 で C から Rust へ:no_std 移行の実例原題: From C to Rust on the ESP32: A Developer’s Journey into no_std
概要: ESP32 向けの既存 C ファームウェアを、no_std の Rust へ移植した実体験をもとに、移行手順とハマりどころを解説します。ツールチェイン構築、HAL/抽象化、アーキテクチャ設計、デバッグのやり方など「実務で必要な粒度」の話が中心です。従来の Rust 開発との違い、no_std の制約、組込 Rust エコシステムの支援状況も扱います。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/1(日) | 18:00–18:25 |
Ariel OS:Rust 製のマイコン向け IoT スタック原題: Ariel OS – The Embedded Rust Software Stack for Microcontroller-based IoT
概要: Rust で書かれたマイコン向け OS/スタックとして Ariel OS を紹介します。Embassy や embedded-hal を基盤に、各種マイコン(Cortex-M / ESP32 / RISC-V 等)で OS 機能やスケジューリングを提供する方向性が主題です。一般的な評価ボードでの実装例を通して、開発のしやすさと設計意図を示します。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/1(日) | 18:30–18:55 |
BMW 電動シートを ESP32 でハックして究極の椅子にする原題: The Ultimate Office Chair: Hacking a BMW Comfort Seat with an ESP32
概要: BMW の電動シートを「部品として再利用」し、ESP32 で各機能を制御して Home Assistant 連携まで持っていくプロジェクトです。車載バス(CAN 等)や ECU 群の解析、モータ/ヒータ/ポンプ等の制御といった、実際の車載部品の複雑さに踏み込みます。解析の手順や、他の一般的な車載部品へ展開する考え方も含みます。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/1(日) | 19:00–19:25 |
barebox で単一イメージ・セキュアブートを実現する原題: Build Once, Trust Always: Single-Image Secure Boot with barebox
概要: 開発/量産/製品など段階ごとにブートローダが乱立して破綻しがちな問題に対し、「単一イメージでライフサイクルを通す」設計を提案します。ヒューズによる状態遷移、デバイス固有トークン、ポリシーベース制御などを組み合わせ、barebox と OP-TEE でセキュアかつデバッグ可能な運用を狙います。現場で効く設計論として価値があります。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/1(日) | 22:00–22:25 |
Rockchip SoC のメインライン対応:この 1 年の更新原題: No Line Like Mainline: Update On The Fully Mainline Software Stack For Rockchip SoCs
概要: ARM64 で mainline Linux を使いたい人がぶつかる「高い・古い・mainline 非対応」といった事情が、Rockchip でどう変わりつつあるかを概観します。利用可能なハードウェアと mainline 周辺の現状、2025 年に upstream できた内容、まだ進行中の話題を整理します。ベンダ BSP ではなく mainline を前提にする人向けのアップデートです。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/1(日) | 22:30–22:55 |
新ボードを mainline Linux / U-Boot / Yocto に載せる原題: Add Support for New Boards to Mainline Linux, U-Boot and Yocto
概要: 新しい ARM / RISC-V ボードを mainline Linux(6.19+)、Yocto BSP、U-Boot に対応させた実例を共有します。デバイスドライバの揃い具合、Device Tree の再利用などで、想像より簡単に upstream できた点がポイントです。ベンダカーネル依存で苦しんでいる人に「mainline 化の道筋」を示します。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/1(日) | 23:00–23:25 |
この 1 年の組込セキュリティ:重要トレンド総覧原題: The Year in Embedded Security
概要: 規制、暗号、ツール、サプライチェーン実務など、組込セキュリティ周辺でこの 1 年に起きた重要変化を「見落としを防ぐ」ために整理します。EU Cyber Resilience Act の影響、PQC の進展、AI 支援ツールの浸透、コンパイラやハードニングの変化、脆弱性報告と保守体制の課題などが扱われます。Linux と RTOS の両方を視野に入れた обзор です。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/2(月) | 00:00–00:25 |
MicroPythonOS:マイコン上の “Android っぽい” GUI OS原題: MicroPythonOS: the best of Android, now on Microcontrollers. AppStore, OTA Updates, Touch Screen, Camera and much more!
概要: リソース制約の厳しいマイコン向けに「箱から出してすぐ使える GUI OS」を目指す MicroPythonOS を紹介します。LVGL ベースの UI、アプリストア、Wi-Fi マネージャ、OTA 更新、テーマやジェスチャなど、モバイル OS 的な使い勝手を狙う設計が特徴です。ESP32 を主対象にしつつ、MicroPython が動く他チップや PC 上の開発モードにも触れます。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
| 2/2(月) | 00:30–00:55 |
Flutter エンベッダー統一で “1 アプリ多平台” を実現する原題: One Flutter Embedder to Rule Them All
概要: Toyota Connected の事例として、単一の Flutter コードベースを車載からスマート TV まで幅広く動かすための「統一 embedder」設計を扱います。多形態デバイスを跨ぐ際の実務判断、パイプライン簡素化、実機デモなどが中心です。組込 GUI やクロスプラットフォーム戦略に興味がある人向けです。 |
組込/モバイル/車載 | ↗ |
まとめ
今回の FOSDEM 2026 のセッション一覧から感じられるのは、次の 3点です。
- 実装や現場での工夫が主題になっていること。たとえば Rust やセキュリティ、センサーや小型デバイスでの AI といったテーマが、単なる紹介ではなく「どう使うか・どう動かすか」という観点で語られています。
- AI は “万能” ではなく、どう実装・運用するかにフォーカスが移っていること。単にモデルを走らせるだけでなく、推論の高速化や分散、リソース制約下で使う方法が現実的な話題になっています。
- 組込技術や OS の話題が幅広く含まれていること。Rust やエッジデバイスだけでなく、BSD 系 OS や Python の性能改善、ブートローダーのセキュア設計といった、普段の開発でも役立つ実践的な内容が散見されます。
ちょっと急いでまとめたので(はい、AI にも手伝って貰いました)、内容や日本語訳にポカがあるかもしれません。その際は、以下のフォームからお気軽にご指摘頂けましたら幸いです。
