[番外編] 立ち食い蕎麦の価格推移(2003年〜2023年)

投稿者: | 2021年3月7日

How Japanese soba-stand noodle prices have been changed so far.

  • 文章を大幅にリライトさせて頂きました。(2023年5月)
  • 2023年11月に箱根そばの値上げがあったので、加筆修正しました。
  • 2003年当時まで遡れる貴重なウェブサイトを拝見し、参考とさせて頂きました。

今日は食べ物のお話です。

皆様は立ち食い蕎麦を召し上がりますでしょうか。私にとって立ち食い蕎麦は、外食(?)の原点であり、高校生の頃から最寄りの国鉄(JR)駅で食べていたことを思い出します。新人サラリーマンになってからも、東京は田町駅近くの立ち食い蕎麦をよく利用していました。立ち食い蕎麦は、安くて満足感があり、時間のないときでも、さっと食べることができますからね。

立派な春菊天の乗った蕎麦。八王子駅中央線プラットフォームの、今は無きお店にて(2014年3月撮影)

立ち食い蕎麦は今でもサラリーマンの味方か?

しかし、最近は「安くて」という形容に疑問が出てきました。1995年当時、かけそばは 200円、あるいはそれを少し超える程度だったと記憶しています。しかし後述するように、2023年の今では 380円という価格も見られるようになりました。サラリーマンの所得が同じように上がっていれば問題ないのでしょうが、そうはなっていないように感じます。最近の、特に若いサラリーマンにとって、立ち食い蕎麦は贅沢な朝食になってきているのではないでしょうか。(初老の私にとっても、気軽な食事ではなくなりました。)

価格の推移をネットで調べてみよう

いま一度、立ち食い蕎麦の価格推移について調べてみましょう。

昔はそのような調査は大変だったと思うのですが、現在では検索エンジンという強力な武器があります。それも 2000年台前半は、食事の写真をネットに投稿する人は稀だったと思いますが、ここ 15年ほどでしょうか、外食の光景をブログや口コミサイトに投稿する人が増え、そのような調査が容易になってきました。

さて。立ち食い蕎麦といっても店舗によって価格が異なります。今回は、私にとって思い出深い、かつ、最近まで長く利用している「箱根そば」を例に挙げたいと思います。思い出深いというのは、大学の最寄り駅であった小田急線生田駅にも、1990年頃は箱根そばがあったのです。(もう、随分前になくなったようですが。) その当時、真面目に日記でも書いていれば当時の価格が分かったかも知れませんが、今となっては深海に落とした石ころのごとく、それもはかなき夢です。(当時の価格を御記憶の方があったら、是非御連絡ください。)

閑話休題。私にとって 34年(うち 8年間は、上述の、今は無き信濃路田町店に浮気)の付き合いである「箱根そば」の価格は、どのように推移してきたのでしょうか。

まずは下の写真ですが、上は 2008年 12月、下は 2017年 4月のものです。私は変わり者なのでこういう写真をけっこう所蔵していると思ったのですが、あまり多く発掘できませんでした。(クリックすると拡大できます。)

箱根そばの券売機(2008年12月撮影)

箱根そばのおしながき(2017年4月撮影)

結果発表

前置きが長くなりました。お待ちかねの結果発表です。価格はいずれも税込です。情報は、インターネット上で見つけた写真付きのブログ、クチコミサイトを参考にさせて頂きました。誤りもあるかと思いますが、価格が連続的に単調増加しているので、大きな間違いはないものと考えております。

なお、以下の表について補足ですが、現在の箱根そばには「わかめそば」の設定はなく、2015年頃より、かけそばに多めのワカメが乗るようになりました。

年月 かけそば わかめそば かき揚げ天そば 天玉そば  コロッケそば
2007年5月 240円 350円 400円 360円
2008年10月 370円 380円
2008年12月 260円 330円 370円 420円 380円
2009年3月 (260円?) 330円 380円
2012年9月 260円 370円 420円 380円
2013年1月 260円 330円 370円 420円 380円
2013年5月 260円 330円 370円 420円 380円
2015年2月 270円 340円 380円 430円 390円
2015年5月 280円 設定なし 390円 450円 400円
2017年4月 280円 設定なし (390円?) 450円 400円
2018年4月 300円 設定なし 410円 470円 420円
2020年8月 310円 設定なし 420円 480円 430円
2021年2月 310円 設定なし 420円 480円 430円
2021年12月 320円 設定なし 440円 500円 440円
2022年7月 340円 設定なし 470円 530円 470円
2023年4月 360円 設定なし 500円 580円 500円
2023年11月 380円 設定なし 520円 600円 520円

備考1: 新しい情報が入り次第更新していきます。(最終更新: 2023年10月)

備考2: 2008年8月時点では、少なくとも一部の商品が同年10月と同一価格であることを確認済みです。また、2007年5月の情報を見つけたので追加しました。

グラフにしてみましょう。(上述の通り、2015年5月頃より「わかめそば」の設定がなくなり、かけそばに、わかめが載るようになりました。)

ここ数年で急速に価格が上がっていることが分かります。

消費税について

消費税の影響をまとめておきます。

  • 2014年4月: 5% → 8%
  • 2019年10月: 8% → 10%

貴重なブログを拝見する

さらにもっと昔のデータが欲しいのですが、当時はインターネットが今ほど普及していなかったので、情報を見つけるのが大変です。過去の記憶を辿るブログがあれば参考になるのですが、そのような記録を公開なさっている方は多くないようです。

しかし、最近ようやく貴重なウェブサイトを見つけました。こちらでは、箱根そばの歴史を 2003年まで遡れます。内容をありがたく拝読し、以下に私の理解を簡単にまとめさせて頂きました。

  • 2010年くらいまで(詳細時期不明)、箱根そば店舗の経営母体は複数存在した。「生そば箱根」を名乗る(実際に生麺なら茹でている)店舗と、ゆで麺で提供する「箱根そば」の店舗があった。その後、経営は小田急レストランシステムに統合され(一部、フランチャイズ店も残る)、(おそらく)全てが生そば提供に変わったため、店名から「生そば」が外された。
  • 統合以前には、箱根そばの商品価格は統合されておらず、「生そば箱根」のほうが 20円ほど高い設定となっていた。ただし、店によっては生そばでなくても「生そば」店舗と同一価格の店舗もあった。(向ヶ丘遊園のプラットフォーム上店舗など)
  • 2003年3月当時、「生そば箱根」のかけそばの価格は 240円程度だったと想像される。(上記ウェブサイト執筆の方は、たぬきそばがお好みらしく、かけそばの価格言及が少ないが、他の時期のたぬきそばの価格と照らし合わせると、240円だったと想像するのが妥当。)

昔に思いを馳せる

もっと古い時代、1990年台、さらに 1980年台、立ち食い蕎麦はいくらくらいで食べられたのでしょうか。

他の方にも思い出話を伺いたいところですが、まずは私の若い頃の記憶を頭から絞り出してみます。私が駅で立ち食い蕎麦に立ち寄るようになったのは、食欲旺盛な高校生時代で、1985年頃かと思います。当時は今よりも記憶力が良かったので思い出せるのですが、私の故郷(埼玉県内の国鉄某駅)では、かけそば 180円、かき揚げそば 240円(もしかしたら 220円)、月見そばが 200円だったと記憶しています。

読者の方に頂いた情報

拙ブログを御覧になった方から貴重な情報を頂いております。まとめさせて頂きます。

  • 1970年頃、東武東上線中板橋駅に立ち食い蕎麦屋ができ、たぬきそばが  50円、玉子や天ぷらが 10円だったと記憶している、いう情報を頂きました。ありがとうございました!(2023年7月)

券売機も変わっていく

券売機の移り変わりも面白いものです。そもそも、立ち食い蕎麦屋に、いや、飲食店に、印刷チケット式の券売機が現れたのはいつ頃からなのでしょうか。

この記事の上のほうでは、2008年当時の券売機の写真を紹介しましたが、以下は、2022年3月に中央林間駅にて撮影したものです。

この新しい券売機では、発券時に「そば」と「うどん」、「あたたかい」と「つめたい」を選ぶようになっていて、厨房に自動的に指示が飛びます。店員に半券を渡す必要はなくなり、店内で待っていると「○○番さんのお客様、できあがりました」という、イントネーションの少しおかしな合成音が流れます。店員さんは機械の指示を見て作業するので、客と店員の間の会話は激減しました。

懐かしの写真など

下は、昔の箱根そばの写真です。2008年8月に相模大野、あるいは町田で撮影したものです。私はこの頃のかき揚げのほうが好みです。最近の箱そばのかき揚げは、ちょっと「やりすぎ」を感じます。

相模大野駅プラットフォームあるいは町田駅北口の箱根そばにて(2008年8月撮影)

もう一つは、これも同年同月の、箱根そばのショーケースを撮影したものです。

箱根そばのショーケース(2008年8月撮影)

後記: ラーメンの価格推移と大学新卒の初任給を考える

東海林さだおさんのエッセイを読んでいたら、1988年正月当時のラーメンの価格が書かれていました。現在も荻窪にある「丸福」(2022年末頃、臨時休業だったようです)という有名店で「玉子そば」を食べたというお話ですが、当時、玉子そばが 470円だったと書かれています。ネットで調べてみると、2022年なか頃の情報では 900円となっていました。34年間で、1.9倍の価格になったということです。おそらく、一般的なラーメン店の価格上昇も同程度と考えて良いでしょう。

一方で、こちらの資料によると 1988年から 2019年の間に大学卒業者の初任給は 40%弱しか増えていません。最近の水準で 2022年まで同程度に初任給が増えているとして、2022年までに 43% 程度の上昇でしょうか。つまり、初任給に対するラーメンの価格の比率は、34年間で 1.9 ÷ 1.43 で、33%程度増加している、ということになります。当時は今よりも、ラーメンが財布に優しい外食だったと言えるのではないでしょうか。

箱根そばの最新情報(2023年10月)

11月から、また値上げのようです。とうとう、かけそばが 380円になってしまいました。

2022年7月、2023年4月と値上げが続きましたが、為替レートは去年の 10月頃と大差ないため、今秋の値上げはないのだろうと想像していましたが、ちょっと考えが甘かったようです。

立ち食い蕎麦のファンなので不本意ではありますが、個人的には、この時代、外食で朝ご飯を食べるなら牛丼屋の朝食にしますかね。290円で納豆たまごご飯が食べられます。立ち食い蕎麦より食べるのに時間がかかりますが、10分早起きすれば問題ないでしょう。

おしながき

おしながき(2024年1月撮影)

券売機の画面

券売機の画面(2024年1月撮影)

朝そば、朝ミニ天玉

朝そば、朝ミニ天玉(2024年1月撮影)

今年(2023年)は、値上げのニュースに加えて、箱根そば閉店のニュースもいくつかありました。

その他メモ(備忘録)

  • 2008年10月に、町田北口の箱根そばを訪問。当時の名称は「生そば箱根」。こちらが以前から小田急レストランシステムが経営していた店舗でしょうか?
  • 2012年1月13日に、相模大野店が新装開店し、名代箱根そばという店名となっています。(それ以前の店名は未調査。) おそらく、経営統合に依るものだと思います。左下の写真は、新装一時休業のお知らせ、右下の写真は、新装開業日の写真です。スーツを着た、小田急関係者と思しき人が何人か集まっていました。
     

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