Using e-Gov data, Hermes Agent and GPT-5.6 Luna analyze amateur radio law more reliably, highlighting gains in legal retrieval, cross-referencing, and citation verification.
相模原市で IoT 設計を受託しているファームロジックスです。
以前に、こんな記事を書いたことがあります(2023年11月)。
具体的には、ChatGPT に電波法令を読ませて、AI に法令の解釈が可能かどうかを実験するというものでした。そのときは、ChatGPT で新しく提供されたファイルアップロード機能の評価を兼ねて、当時最新の GPT-4 Turbo の性能確認をしました。
今回は、最新の AI 技術を使って、その後の動向を調査しました。なお、今回は ChatGPT ではなく、流行りの AI エージェント Hermes Agent を使ってみましょう。バージョンは v0.20.1 (2026.8.13) です。LLM(AI モデル)としては、OpenAI の低コストモデル GPT-5.6 Luna を、ただし reasoning effort(推論努力)を max に設定してみました。
GPT-5.6 Luna は、電波法第58条を見つけられるか?
前回と同じ趣旨の質問をもう一度試してみましょう。最初の質問は、2023年と同じです。
私:
日本のアマチュア無線では暗語を使用できますか? これは、電波法のどこで明記されていますか?
GPT-5.6 Luna (max):
いいえ。日本のアマチュア無線局の通信では、暗語を使用できません。
根拠は、電波法第58条(アマチュア無線局の通信)です。条文は次のとおりです。
アマチュア無線局の行う通信には、暗語を使用してはならない。[1]
したがって、通信内容を秘匿するための暗語を用いることは、電波法で明示的に禁止されています。
Sources
[1] e-Gov法令検索:電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)
2023年当時の GPT-4 Turbo と比べて、素直に結論を導き出せました。
電波法第5条の例外まで読めるか
次に、別の質問です。
私:
日本でアマチュア無線局を開設できないのはどういう場合(人)ですか?
2023年の GPT-4 Turbo は、電波法第 5条第 1項を根拠に、日本国籍を持たない人には免許が与えられないと回答しました。GPT-5.6 Luna ではどうなるでしょう?
GPT-5.6 Luna (max):
[思考結果]
アマチュア局固有の要件もあるため、電波法第5条だけでなく、総務省令の「開設の根本的基準」も確認します。
現行条文では、外国籍はアマチュア局について例外扱いです。一方、個人局の申請者には無線従事者資格等が必要です。最近の法令違反・免許取消しは「必ず不可」ではなく、免許を与えないことができる事由なので、その違いも根拠付きで整理します。
外国籍の扱いを誤解しやすいため、第5条第1項と、アマチュア局への適用除外である第2項を併せて確認します。
申請者本人だけでなく、設備・目的が基準を満たさない場合も免許されないため、アマチュア局固有の設備条件も根拠へ追加します。
[結論]
日本で個人のアマチュア無線局を開設できない、または免許されない主なケースは、次のとおりです。
1. 必要な操作資格を持っていない
個人局の申請者は、次のいずれかに該当する必要があります。[2]
– そのアマチュア局の設備を操作できる無線従事者資格を持つ人
– 電波法施行規則第34条の8に定める資格を持つ人
– 要件を満たす社団
したがって、対応するアマチュア無線技士等の資格を持たない個人は、個人局の免許を受けられません。また、申請する設備は本人の資格で操作できる範囲内である必要があります。[2]
2. 最近の法令違反や免許取消しがある
電波法第5条第3項により、次の人には無線局免許を与えないことができます。[1]
– 電波法または放送法の罪で罰金以上の刑を受け、刑の執行終了等から2年を経過していない人
– 電波法第75条または第76条の所定の規定により無線局免許を取り消され、取消しから2年を経過していない人
重要なのは、条文が「与えない」ではなく、「与えないことができる」としている点です。自動的・永久的な禁止ではなく、2年間の裁量的な欠格事由です。
3. 申請内容や設備が基準を満たさない
申請者本人に問題がなくても、次の場合は免許されません。[1][2]
– 工事設計が技術基準に適合しない
– 周波数を割り当てられない
– 設備が申請者の資格で操作できる範囲を超えている
– 移動するアマチュア局の空中線電力が50Wを超える
– 原則として免許人以外の使用に供するものになっている
– 開設目的、通信相手、通信事項が法令に違反する、または公共の福祉を害する
– 既設局の運用や電波監視に支障を与える
外国籍の場合
外国籍であることだけを理由に、アマチュア無線局を開設できないわけではありません。
電波法第5条第1項には外国人等に対する一般的な欠格規定がありますが、同条第2項により、これはアマチュア無線局には適用されません。[1]
ただし、外国籍の人も、認められた操作資格など、アマチュア局固有の条件を満たす必要があります。[2]
Sources
[1] e-Gov法令検索:電波法
[2] e-Gov法令検索:無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準
大きな進歩を感じます
3年足らずでの進歩は、かなり大きいように感じます。
2023年の GPT-4 Turbo では、電波法第 5条第1項を根拠に、日本国籍を持たない人には免許が与えられないと回答しました。しかし実際には、第 5条第 2項では、第 1項の国籍要件をアマチュア無線局に適用しないと明記されています。したがって、外国籍であることだけを理由に、アマチュア無線局を開設できないわけではありません。今回の回答は、この原則と例外を区別できるようになりました。さらに、次の関連規定も確認しています。
- 電波法第5条第3項にある、法令違反や免許取消し後2年以内の裁量的な欠格事由
- 電波法第7条にある、技術基準、周波数割当て、開設の根本的基準による審査
- 「無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準」第6条の2にある、無線従事者資格、設備、開設目的、妨害防止などの条件
第 5条第 3項の文言が「免許を与えない」ではなく、「免許を与えないことができる」である点も区別していました。
総評
(以下、私は法律の専門家ではありませんので、その点はご容赦ください。)
今回の結果は、GPT-5.6 Luna がトレーニング時のパラメタで記憶した法令を回答したものではありません。AI エージェント Hermes Agent が e-Gov 法令検索の公式データを取得し、XML から関係条文を抽出して、電波法と総務省令を調べてくれたものです。
また、2023年と 2026年の結果を、GPT-4 Turbo と GPT-5.6 Luna というモデル単体の性能差として単純に比較することはできません。モデルだけでなく、インターネット上から資料を取得するツール、長い法令から関係条文を探す能力、参照法令を追う手順まで含めて、現在の AI 利用環境が改善したと考えたほうが良いかも知れません。
しかしながら、わずか 3年足らずで、法令 PDF の一部だけを読んで例外規定を見落としていた段階から、公式データを取得し、複数の法令をたどって引用を検証する段階まで来ました。今回の結果を見てみますと、AI そのものだけでなく、AI に調査させる仕組も含めて、かなりの進歩があったと感じます。
今日はここまで。
