A chance discovery at an NTT building leads to exploring Japan’s 1973 White Paper, covering telegrams, telephony, and historical communications technology.
相模原市で IoT 設計を受託しているファームロジックスです。
先日、相模大野付近の行幸通りを散歩していたところ、NTT の建物前で改修工事のお知らせを見かけました。ここの建物 —いまでも電話局と呼ぶのでしょうか— だけではなく、現代の電話局で人影を見かけることは滅多にありません。いえ、私が子供だった昭和 50年代でも、郵便局と向かい合った、電電公社のマークがついた「建物」を見て、「なんのための建物なんだろう」と思っていたくらい、人影の少ない施設でした。
この「電話局」ですが、1970年代の電話加入者急増期に機器を収容するために建設されたのかもしれませんし、それ以前の手動による電話交換業務や電報業務のために、多くの職員を擁する必要があったのかもしれません。
そう。「電報」といえば、私の子供の頃(1980年頃)には既に過去のメディアになりつつありましたが、若い頃に NTT に関連する通信機器を設計していた経験もあり、電話局や電報サービスには多少なりとも興味があります。
昔の小説、随筆、映画を見ていると「○○さん、電報ですよ!」という電報配達夫のシーンが出てきます。かつては多くの人が、電報を今では想像できないくらい頻繁に利用していたのでしょうか。相模原でも、電報配達員が見られたのでしょうか。
そんな疑問から、しばらくネットで検索していました。既に多くの方々の記憶から薄れた「電報」ということもあるのでしょう。慶弔電報以外の情報は、ネットではあまり見つかりませんでした。
昔の通信白書を見つけた
しかし、根気よく探していたところ、昭和 48年の通信白書を見つけました。内容は非常に興味深いです。過去現役を問わず、通信系の技術者、それだけではなく、技術文化史に興味のある方なら興味深くお読み頂けることと思いました。
電報はどのように利用されていたのだろう
まずは、電報サービスについて調べます。昭和 48年の通信白書によると、以下のことが分かります。
- 昭和 38年度当時でも、電報の「国民当たり通数」は、年度当たり 1.0 通に過ぎなかった。(一般国民にとって、滅多に利用しない通信手段だった。)
- 昭和 38年度をピークに、電報の利用は減り続けている。
- 昭和 38年度では業務用と私用(慶弔用を除く)が 86% を占めていたが、昭和 45年度になると、慶弔用が 40% を占めるようになった。(既に電報は、一般的な通信手段ではなくなりつつあった。)
- 昔のドラマや小説に出てきた「チチキトクスグカエレ」などの緊急用途は、昭和 48年当時、既に 3%程度まで減っていた。
なお、通信白書昭和 48年版は、総務省のウェブサイトで閲覧可能です。PDF 版と HTML 版が提供されていますが、PDF 版には一部スキャンのページ欠落があるようですが、一方で HTML 版には OCR の読み取りエラーも見られますので、使い分けが必要でしょう。
通信白書で見つけた興味深いトピック一覧
白書で見つけた興味深いトピックをランダムに紹介します。(ページ数は PDF 版に基づきます。)
- 電子計算機の普及率:P.42によれば、当時 1万人当たりの電子計算機台数はわずか 0.65台だったそうです。現在のスマートフォンの普及率と比較すると、技術の進歩を実感します。
- 電話計算システム:P.71では、電話を利用した計算サービスが紹介されています。当時としては画期的なサービスであり、私も子供の頃に興味を持って遊んでいた記憶があります。(高価なので、あまり遊んでいると叱られました。)
- ポケットベルと移動通信:P.76では、ポケットベル(ポケベル)や移動通信システムのネットワークについて触れられています。ポケットベルは、携帯電話が普及する以前の通信手段として、重要な役割を果たしていました。
- 郵便制度のユニークな側面:P.117では、第四種郵便物として「きのこ」、「はち」、「食用がえる」などが明記されています。当時の郵便制度の柔軟さが伺えます。
- 電子交換機の開発:P.353では、D10 という電子交換機の開発が昭和 47年から始まっていたことが記されています。私が就職した頃(1995年)には、後継機と思われる D70 や D60 という機種名をよく耳にしました。
- テレビ電話の構想:P.358では、テレビ電話の技術開発について触れられています。当時は未来の技術として注目されていました(私の好きな子供向け図鑑などでは、必ず紹介されていました)が、現在では Zoom などのビデオ通話が一般的になっています。
すべてをご紹介することはできませんが、皆様も是非御覧になってください。