MicroPython で TensorFlow Lite for Micro を試してみる(試行錯誤編)

(更新

Running TensorFlow Lite for Microcontrollers on MicroPython.  (Trial and Error Edition)

さて。前回の記事では、MicroPython で TensorFlow Lite のモデルをそのまま動かすという、tensorflow-micropython-examples プロジェクトを紹介しました。プリビルドファームウェアをフラッシュメモリに書き込むところまで、なんとかできました。

さて、今回はその動作確認をしてみましょう。

前回は MicroPython のブートまで進みましたが、今回はとりあえず MicroPython の camera モジュールがインポート(import)できるかどうか、確認します。

えいっ。

>>> import camera
Traceback (most recent call last):
  File "", line 1, in 
ImportError: no module named 'camera'

がーん。import できないではないですか!

MicroPython のマニュアルを参考にし、組み込まれている(import できる)モジュールのリストを表示してみます。

>>> help('modules')
__main__          framebuf          uasyncio/lock     upip_utarfile
_boot             gc                uasyncio/stream   uplatform
_onewire          inisetup          ubinascii         urandom
_thread           math              ucollections      ure
_uasyncio         microlite         ucryptolib        uselect
_webrepl          micropython       uctypes           usocket
apa106            neopixel          uerrno            ussl
btree             network           uhashlib          ustruct
builtins          ntptime           uheapq            usys
cmath             onewire           uio               utime
dht               uarray            ujson             utimeq
ds18x20           uasyncio/__init__ ulab              uwebsocket
esp               uasyncio/core     umachine          uzlib
esp32             uasyncio/event    uos               webrepl
flashbdev         uasyncio/funcs    upip              webrepl_setup

microlite や ulab モジュールはちゃんと入っているのに、camera モジュールがありません。。。

メンテナーの方に問い合わせてみる

GitHub の issues ページで質問してみたところ、このプロジェクトの ESP32 camera 版メンテナーと思しき Uli Raich さんから助言を頂きました。詳しくはこちらの Q&A を御参考頂きたいのですが、どうも、tensorflow-micropython-examples のバイナリ配布 MicroPython ファームウェアで、camera モジュールがうまく組み込まれなくなってしまっているようです。(Uli Raich さんが最後にメンテしたのは今年 2022年の 1月末くらいで、それ以降はメンテできていないぽい。)

Raich さんから「最新の MicroPython との互換性が壊れてしまっているので、いろいろトリッキーなんだけど、とりあえず自分でファームウェアをコンパイルしてみてくれますか?」という回答があったので、自分でコンパイルしてみることにしました。いま考えると、別に最新の MicroPython じゃなくてもいいんだけどな、と思うのですが、Raich さにも頻繁にメンテナンスしているお時間がないようなので、とりあえず自分でやってみることにした次第です。

一発ではうまくいかず、何度かやり取りをしたのですが、なんとか動くようになったので、以下に作業をまとめておきます。御参考になれば幸いです。

自力ビルド説明

自力ビルドの方法は、Uli Raich さんが書かれた以下のドキュメント(TWiki だー、懐かしい)に説明されていますが、若干説明不足があるので、補足しながら以下に説明します。

esp-idf の準備

tensorflow-micropython-examples の ESP32 ファームウェアをビルドするには、Espressif 社の開発ツール esp-idf のインストールが必要です。Windows、macOS、Linux で利用できますので、これは皆様各自でインストールしてください。どうしても不明な点があれば、本ページ末尾のお問い合わせフォームから御連絡ください。

インストール方法は以下にあります。なお、esp-idf のバージョンは、Uli Raich さんが利用している v4.3.1 に合わせることにします。

余談ですが、私は pyenv virtualenv の中でビルドしようと思ったのですが、esp-idf は通常(?)の virtualenv を使うことを前提としていて、私の知識では pyenv とはうまく連携できそうにありませんでした。しょうがないので、pyenv global で特定のバージョンの Python(私の場合は 3.9.11)を選んで、その上でビルドすることにしました。

インストールしたら、idf.py が動くことを確認しておいてください。

ソースコードの展開

まず、tensorflow-micropython-examples を GitHub repo からチェックアウトします。

bash$ export top=$HOME/dokoka  # 任意のディレクトリ
bash$ mkdir -p $top
bash$ cd $top
bash$ git clone https://github.com/mocleiri/tensorflow-micropython-examples tflite-micro-micropython

加筆(2023年4月29日〜5月6日)

最新のバージョンだと、以下の手順でうまくビルドできないかも知れません。私の試したバージョンは、2c4573dbaf41dd391a15276bbe4bd9368ae169c4 ですので、git clone のあと、

bash$ cd tflite-micro-micropython
bash$ git checkout 2c4573dbaf41dd391a15276bbe4bd9368ae169c4

して頂きますと、私と同じバージョンで御評価頂けるのではないかと思います。

なお、このブログを御覧になった方から、一点情報を頂きました。このビルド作業では、PC のメモリが 2GB では不足で、4GB 程度は必要のようです。ビルド時にエラーになる場合は、メモリサイズも御確認ください。

必要な(ホスト用)Python モジュールのインストール

Pillow と Wave が必要だそうです。

bash$ pip3 install Pillow Wave

git submodule update

Git のサブモジュールを展開します。

bash$ cd tflite-micro-micropython  # 上記で clone したディレクトリです
bash$ git submodule init
bash$ git submodule update --recursive

ディレクトリ microlite/tfm の再構築

この辺はよく分かってません。Raich さんのドキュメント通りです。

bash$ cd tensorflow
bash$ ../micropython-modules/microlite/prepare-tflm-esp.sh  # 少し時間がかかります。1〜2分?

最新の MicroPython ソースコードの展開

最新、、、と言いたいところですが、皆様がお試しになる時期によっては、また動かなくなってしまう可能性があるので、以下の Git コミット ID を御利用いただいたほうが確実でしょう。

bash$ cd ..
bash$ rm -rf micropython
bash$ git clone https://github.com/micropython/micropython.git
bash$ cd micropython
bash$ git checkout bdbc44474f92db19a40b5f710a140a0bf70fb0ec  # 最新が良い場合は略
bash$ git submodule update --init lib/axtls
bash$ git submodule update --init lib/berkeley-db-1.xx

最新の ulab の展開

micropython-ulab も同様に作業します。

bash$ cd ..
bash$ rm -rf micropython-ulab
bash$ git clone https://github.com/v923z/micropython-ulab.git
bash$ cd micropython-ulab
bash$ git checkout 5ccfa5cdd9040c2c4219c07b005256427d31ed1c  # 最新が良い場合は略

aaEspressif の camera driver を取得

bash$ cd ..
bash$ cd tflm-esp-kernels
bash$ git submodule update --init examples/person_detection/esp32-camera

MicroPython クロスコンパイラのビルド

bash$ cd ../micropython/mpy_cross
bash$ make

コードの手修正

以下の Q&A の私のポストにあるように、ソースに修正をしてください。Raich さんの TWiki ドキュメントも御参考ください。

なお、Python コードの修正は Espressif ESP-EYE ボードを利用するためのものです。(次回説明)

依存関係の解決

よく分かってませんが、以下が必要です。

bash$ cd $top/tflite-micro-micropython/micropython/ports/esp32
bash$ make BOARD= submodules

ファームウェアのビルド

ようやくビルドできます。

bash$ cd $top/tflite-micro-micropython/boards/esp32/MICROLITE_SPIRAM_CAM
bash$ idf.py clean build

ファームウェアの書き込み

前回の説明を参考にして、ESP-EYE ボードをブートモードにします。そして、

bash$ idf.py flash

これで、無事にビルドしたファームウェアを書き込めました。

とりあえず camera モジュールの import

ここから先、カメラによる person detection(人の認識)まではもう少し手数がかかるのですが、とりあえず今回は、camera モジュールが import できるかどうかだけ、確認しておきましょう。

ファームウェアを書き込んだ ESP-EYE をリセットします。シリアルターミナルには、次のような表示が出るはずです。

MicroPython 2c4573d-dirty on 2022-09-26; ESP32-cam module (microlite) with ESP32
Type "help()" for more information.
>>> 

camera モジュールをインポートしてみます。

>>> import camera
>>> 

お、今度は大丈夫そうです。最後に、カメラを初期化してみましょう。以下は、ESP-EYE の場合です。そうでない場合は、こちらを参考にしてください。(カメラが OV2640 か OV3660 で、SPI バスで繋がっている場合には、ここにない ESP32 ボードでも、引数の変更でなんとかなるかも知れません。)

>>> camera.init(0,format=camera.GRAYSCALE,framesize=camera.FRAME_96X96,
... sioc=23,siod=18,xclk=4,vsync=5,href=27,pclk=25,
... d0=34,d1=13,d2=14,d3=35,d4=39,d5=38,d6=37,d7=36)
E (399819) gpio: gpio_install_isr_service(460): GPIO isr service already installed
True

なんか GPIO 周りでエラーが出てますが、とりあえずカメラの初期化はできているようです。

今日はここまで。おつかれさまでした。

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