デバイスのデータシートや電波法令をChatGPTは解釈できるだろうか?

Utilizing device datasheets and radio laws, this blog evaluates ChatGPT’s PDF reading capabilities and custom GPTs. It delves into PDF upload methods in ChatGPT Plus, exploring their effectiveness and limitations.

An illustration in a flat and simple style, featuring a Japanese amateur radio operator reading a dictionary. The setting is minimalist, focusing on the individual who is seated at a modern, clean desk. The dictionary is prominent in the scene, with the operator looking thoughtfully at the open pages. In the background, there's a hint of radio equipment, including a handheld transceiver and a small antenna, but these elements are stylized and subdued. The color palette is composed of soft, muted tones to keep the atmosphere calm and focused. The image should have a wide aspect ratio.

相模原市で IoT 設計を受託しているファームロジックスです。

先日から、ChatGPT の新機能である PDF ファイルの読解機能、カスタム ChatGPT を公開できる GPTs について紹介して参りました。

今回は、そのいずれでも活用できる PDF アップロード機能を、デバイスのデータシートや電波法令を使って評価してみましたので、報告させて頂きます。

ChatGPT Plus における利用

前者の、通常の ChatGPT Plus における PDF アップロードでは、以下のようなプロンプト入力画面で左端のアイコンをクリックすれば PDF ファイルをアップロードできますし、直接、チャット画面のドラッグアンドドロップすることもできます。

PDF ファイルをアップロードする際の制限は、以下の通りです。

  • サイズは 25Mバイトまで
  • ページ数の制限は特になし
  • パスワードなどによって読み取りが制限されていないこと
  • PDF ファイルの解釈には、ファイルに実際にテキストが含まれている必要がある。現状では、OCR 機能はなさそうなので、画像からテキストへの変換はできない

まずはデータシートを読んで貰おう

まずは試しに、デバイスのデータシートで試してみましょう。データシートとしては、手元にあった TI の TLV320ADC3001 のデータシート(SLAS548D)を使ってみました。

注意: このように著作権のある PDF ファイルをアップロードする際、後述の GPTs の knowledge ファイルとして利用してカスタム GPTs を公開すると、著作権の侵害になる可能性がありますので、避けたほうが良いでしょう。

ファイルをアップロードして、いくつか質問してみます。

:

この文書を要約してください。

ChatGPT:

The document “slas548d.pdf” is a detailed datasheet for the TLV320ADC3001, a low-power stereo audio analog-to-digital converter (ADC) with an embedded miniDSP, designed for use in wireless handsets and portable audio devices. Key features and specifications include:

(以下略)

:

このデバイスは、ADC用のAGC機能がありますか? あったら、その機能概要を400文字ほどの日本語で説明してください。

ChatGPT:

はい、TLV320ADC3001デバイスには、アナログ・デジタル変換器(ADC)用の自動利得制御(AGC)機能があります。このAGC機能は、3つのオーディオ入力の各々に設定可能で、音声やオーディオ信号の入力レベルが変化する際に自動的に利得を調整し、一定の出力レベルを保つことを目的としています。利得の範囲は、最大40dBまで設定可能です。AGCは、攻撃時間(7ミリ秒から1.4秒)と減衰時間(50ミリ秒から22.4秒)の広範な設定範囲をプログラムすることができます。また、ノイズポンピングを避けるためのプログラム可能なノイズゲート機能も含まれています。これにより、さまざまな環境やシナリオでの柔軟なオーディオ処理が可能になります。

:

その説明が書かれている文書中のセクション番号あるいはページ番号を教えてください。

ChatGPT:

TLV320ADC3001デバイスの自動利得制御(AGC)機能に関する説明は、文書のセクション “5 Description (continued)” に記載されています。具体的には、この情報は文書のページ番号に基づく番号ではなく、セクション番号によって参照されています。

この他に、絶対最大定格、ESDにおけるヒューマンボディモデル(HBM)は何ボルトか、デバイスの推奨応用分野は何か、などを質問してみましたが、的確に回答してくれました。また、その内容がどこのセクションで説明されているかも教えてくれました。

GPT-4 Turbo の PDF 読解機能は、新規のデバイス、あるいは以前に使ったことがあるが詳細を忘れてしまったデバイスのデータシートの概要把握などに、役立てることができそうです。

次に電波法令を読んで貰おう

私は、陸上無線技術士など無線従事者の免許を取得する際に、電波法および関連法規の勉強をしたことがあります。私は法律の専門家でないので、独特の文体で記述されている法令の理解には、かなり苦労しました。

ここでは、電波法について ChatGPT にいくつか質問をしてみましょう。

まずは、PDF のアップロードではなく、Bing ブラウジング機能で試してみます。アマチュア無線家の方が資格を取得する際に必ず覚えることになる、有名な条文を確認してみましょう。

:

以下の法令を読んで、回答してください。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000131
アマチュア無線では、暗語を使用できますか? これは、電波法のどこで明記されていますか?

ChatGPT:

アマチュア無線での暗語の使用についてのご質問に関連して、電波法を確認しましたが、残念ながら該当する情報を見つけることができませんでした。電波法の全文を確認するにはさらに時間が必要です。

しかし、一般的にアマチュア無線においては、暗語やコードを使用することは許可されていないとされています。これは、アマチュア無線が公開された通信を目的としており、その内容が第三者にも理解可能であることが求められるためです。ただし、これは一般的なガイドラインであり、具体的な条文については、電波法の詳細な確認が必要です。

もし、この件に関してさらに情報が必要であれば、引き続き調査を行いますので、お知らせください。

どうも、ブラウジング機能では法令をうまく解釈できなかったようです。この後、「日本の電波法の第五十八条を確認してください」と助け船を出してみましたが、やはりダメでした。

そこで、上記サイト(e-Gov法令検索)のページを PDF として出力し、それを使ってみることにしました。PDF ファイルをアップロードして質問します。

:

アマチュア無線では暗語を使用できますか? これは、電波法のどこで明記されていますか?

ChatGPT:

アマチュア無線での暗語の使用は禁止されています。これは電波法の第五十八条で明記されています。

今度はうまくいきました。ちなみに、先ほどの Bing ブラウジングとは別のチャットセッションを使用しているので、私が先ほど助け船として出したキーワード「第五十八条」は、ここでは反映されていないはずです。PDF ファイルから GPT が自分で見つけてきたと考えるべきでしょう。

次に、もう少し難しい質問をしてみます。

:

アマチュア無線局の免許が許可されない事由について、3つ説明してください。

ChatGPT:

アマチュア無線局の免許が許可されない事由について、電波法第五条には以下の3つの条件が挙げられています​​:

  1. 日本の国籍を有しない人には無線局の免許が与えられません。
  2. 外国政府やその代表者にも無線局の免許は与えられません。
  3. 外国の法人や団体、またはこれらの者が役員の三分の一以上または議決権の三分の一以上を占める法人や団体にも無線局の免許は与えられません。

非常に惜しいのですが、実はこの解釈は間違っています。

確かに電波法では、

第五条

次の各号のいずれかに該当する者には、無線局の免許を与えない。
一 日本の国籍を有しない人
二 外国政府又はその代表者
三 外国の法人又は団体
四 法人又は団体であつて、前三号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員のもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの

とあるのですが、その直後に

前項の規定は、次に掲げる無線局については、適用しない。
一 実験等無線局
二 アマチュア無線局(個人的な興味によつて無線通信を行うために開設する無線局をいう。以下同じ。)

(略)

という条項があるのです。ですから、日本国籍を有しなくても、アマチュア無線局は免許されます。GPT-4 Turbo でも、まだそこまでは理解できないということでしょうか。

もっとも、上記の法令解釈に要する時間は 1分間程度ですから、そこまでの要求は、現状では厳しすぎるのかも知れません。

GPTs の knowledge(知識)として PDF を利用する

このような PDF ファイルの利用は、先日報告させて頂いたカスタム ChatGPT(GPTs)でも利用できます。

GPTs の編集画面で Configure のタブを選択すると、以下のような設定ボタンがあります。

この Upload files ボタンをクリックすると、先ほどと同様に PDF ファイルをアップロードして、解釈させることができます。ファイルのサイズ制限も、先ほどと同様です。なお、PDF ファイルを複数アップロードすることもできるようです。

なお先ほども書きましたが、このようなカスタム ChatGPT を公開する場合には、アップロードする PDF ファイルの著作権には注意を払う必要があるでしょう。

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