年末の Roomba オーバーホール兼メンテナンス

Overhaul and maintenance of iRobot Roomba 530.  Finally identified a photo transistor was broken.

年末恒例の、お掃除ロボット Roomba(ルンバ)のオーバーホールです。オーバーホールに合わせてバッテリーやブラシを交換することもあるのですが、今回はなしです。その代わり、以前から気になっていた現象の徹底調査をすることにしました。

うちの Roomba は 2008年に購入したもので、それから、あちこちの部品を交換しながら 11年間使っています。動きが可愛らしいので愛着が湧き、ちょっとくらい調子が悪くても買い換える気にはなりません。メーカー保証外の部品交換としては、以前に IR モジュール(IR Bumper Sensor)を交換したことがあります。これはネットを探すとたくさんの情報が出てくるように、Roomba 500 シリーズ共通の欠陥のようで、経年変化でセンサ素子が壊れてしまうというものです。このセンサが壊れると、Roomba が障害物にぶつかってもそれを検出できなくなる、あるいは障害物にぶつかってないのに障害物に当たっていると誤検出します。(後者のほうが厄介。)

Bumper Sensor のほうはその後問題なく動作しているのですが、ここ 1〜2年ほど、また Roomba の動きがおかしくなっていることに気づいていました。現象の一つは、ときどき自分の周りの状況がよく分からなくなるようで、同じ場所をグルグル回ること、もう一つは、充電用のドッキングステーションにスムーズに帰れなくなる、というものです。そこで、(以前にもやったことはあるのですが)まずは Roomba の出荷テスト(Built-in Self Test)を実行してみることにしました。

米国 iRobot 社の優れている点あるいは尊敬できる点は、技術情報の公開に熱心なこと、および補修パーツの提供に積極的なことです。(現在は分かりません。また、日本の代理店は「売らんかな主義」が強く感じられ、全く好きではありません。) 以前は公式サイトがあったと思うのですが、いまでも Roomba 500 Series Service Manual と検索すると、PDF ファイルが見つかるはずです。

出荷テストのシーケンスを追っていくと、どうも右側の Outer Light Touch Sensor が正しく動作していないようです。そこで、その部品のチェックも兼ねながら分解清掃することにしました。備忘録として、分解の手順を写真で残しておこうと思います。しばらくぶりに分解して一番悩んだのは、上面の faceplate というカバーの外し方です。爪が 4つ引っかかっているだけなのですが、以前、Roomba の上にハチミツを(なんでやねん!)こぼしてしまったためか、カバーがくっついていて簡単には外れませんでした。どこかに隠しネジでもあるのかと、30分ほど悩みました。

      

Light Touch Sensors というのは、おそらくIR(赤外)LED 6個と赤外受光素子 6個のペアの組み合わせになっています。配線を追っていこうと思ったのですが、いかにも家内制手工業で作ったような難しい作りになっていて一苦労です。(最新の製品では、このような手配線ではなく、おそらく PCB か何かのモジュールになっているのではないかと思います。どうでしょう?)

常識的に考えると、(2端子の)素子が 12個ですから24本の配線があって良さそうなのですが、基板には 10ピンと 6ピンのコネクタが一つずつしかありません。どこかでピンを並列に繋いでいるとすると、どこかに二股の配線があっても良さそうなのですが、それもありません。また 30分ほど悩みました。

配線を追っかけていって最初に分かったことは、受光素子側は全てのピンが独立に引き込まれているものの、LED のほうは共通結線になっているということでした。調べていくと、2つのコネクタそれぞれに赤・黒ペアの線があり、それが LED 用のようです。しかし、そのピンを DMM(デジタルマルチメータ)に当てても、ダイオードの順方向電圧が全然見えてきません。絶縁しているように見えるのです。

またしばらく配線を追っかけて、ようやく理由が分かりました。どうも、LED は(たぶん)3つずつ直列結線になっているということです。そのため順方向電圧が高すぎ、DMM では絶縁に見えてしまうのです。

しかしここまでの調査で、犯人は LED ではなくて受光素子であることまでは分かりました。なぜなら、LED は直列になっているので、LED のせいで右側の Outer Light Touch Sensor だけが検出できなくなるということは考えられないからです。

次に、受光素子はフォトダイオードであると予想し、再度 DMM のダイオードテストモードで当たってみたのですが、どのように端子を当てても絶縁に見えます。しばし悩みます。試しにと思って抵抗測定モードで当たると、一方の極性接続で抵抗値が見えることが分かりました。また、周りの照明を明るくしたり暗くしたりしながら当たっていくと、一つの素子だけが照度に反応していないことが分かりました。それが、右側の Outer Light Touch Sensor であることが判明し、ようやく不良部品までは特定できました。(下の写真で、コネクタの一番左の赤・茶ペアです。) やった〜!

問題は、その素子が何であるか、です。おそらくフォトダイオードかフォトトランジスタだと思うのですが、いままで、それぞれの素子を DMM で真面目に調べたことがないので、その振舞いがダイオードなのかトランジスタなのか判断できません。ダイオードであれば、DMM でおそらく順方向電圧が見えるはずです。ネットでいろいろ調べてみたところ、このような記事を見つけました。いわく、

The diode test on the DMM should show something like a 700 mV forward drop for a photodiode, but open or much more (e.g. > 4 V) for a phototransistor.

といことで、Roomba のこの素子は IR 用のフォトトランジスタと判明しました。とても型番までは分かりませんが、たとえば Vishay 社の製品リストを当たってみると、IR 用途で 3mm 径のスルホール製品は TEFT4300 くらいしかないようなので、それほどいろんな特性の異なる製品はなさそうです。注意しなくてはいけなそうな特性は、Collector Light Current と Spectral Bandwidth のようです。

しかしいずれにしても、今回は手元に部品がないので修理は諦めました。いずれ、チャンスがあったらフォトトランジスタを入手して交換し、直るかどうか見てみたいところです。

今日はここまで。