Some consideration of 2.4 GHz band channel interference comparison between Bluetooth LE and ZigBee (Pro).
Bluetooth LE と ZigBee を比較する際に一つ考えなくてはならないのが、他の 2.4GHz 帯通信からの干渉についてです。いずれも変調方式や多重アクセス方式に違いがあるので簡単には比較できませんし、特に変調方式と無線通信干渉については、私は専門外なのであまりよく分かりません。今回は、物理層よりも上のレベルで、二方式の違いについて検討してみました。
周知のように、2.4GHz 帯は ISM バンドと言われ、数多くの無線方式がひしめき合っているために使いにくい周波数帯と言われています。実際よく知られたものだけでも、Wi-Fi、Bluetooth (LE)、ZigBee などで共通に使われています。Wi-Fi は無線出力の大きいノードが多いので比較的頑健ですが(それでも、伝送レートが落ちたりする)、Bluetooth LE や ZigBee は比較的無線出力が小さいため、他の方式に通信を潰された(覆い被さられた)ときの影響には大きなものがあります。
Bluetooth LE
まず Bluetooth LE ですが(註: 従来の Bluetooth とは物理層が異なりますので、異なる通信方式と考えられます)、親ノードに存在を知らせるための Advertising チャネルが 3周波数チャネル(以下単純にチャネル)、また通信のためのチャネルが 37チャネルあります。Advertising では、常に 3つのチャネルで送信することにより干渉(妨害)を避け、またデータ通信時には 37チャネル間で適応周波数ホッピングすることにより、他の通信からの干渉を避けています。適応周波数ホッピングというのは、条件の悪いチャネルを動的に回避することで、通信の信頼性を得ようというものです。後発技術ということもあってか、この辺の設計には「なるほど」と感心させられる技術が多いです。
ZigBee
一方で ZigBee(あるいは IEEE 802.14.5)ですが、通信チャネルは 16チャネルあり、いずれか一つのチャネル上で 2Mchip/s の DSSS(スペクトラム直接拡散)をしています。具体的には 4ビットのデータシンボルを 32チップにマップする変調方式のようで、スペクトラム拡散によりピーク性のノイズには耐性があると思われますが、多重アクセス方式はあくまでも CSMA-CA であり、一つのチャネルでは一つのノードしか送信ができません。あるノードが送信をする場合は予め CCA と呼ばれる動作で、当該チャネルで他の送信がないこと(かつ/あるいは、他の通信方式が電波を出していないこと)を確認してから送信を始めます。なお、通信のチャネルは Coordinator と呼ばれる親ノードが決定しますが、基本的には固定であり、あるチャネルで干渉が発生した場合、親ノードが維持する PAN(ネットワーク)では通信の品質が下がることになります。
考察
このように、Bluetooth LE と ZigBee ではチャネル干渉への対策が異なり、若干 ZigBee のほうに難があるように思われます。ただし、ビットレートが 250kbps と低いこと、また、DSSS により通信品質を確保していると考えられますので、ZigBee がとりわけ干渉に弱い、とは言い切れないかも知れません。
なお、ZigBee ではこのチャネル干渉問題が既に認識されており、新しい ZigBee Pro と呼ばれる規格では Frequency Agility(周波数可変性?)という技術が導入されています。これは例えば、親ノードが定期的に全てのチャネルのスキャンをすることで、通信チャネルの変更が必要かどうかを判定し、子ノードに通信チャネルの変更を指示するというものです。(ちなみに、親ノードが勝手にチャネルを変更すると、子ノードが全て Orphaned Device という状態になってしまい、子ノードが全チャネルで親ノードを探すという困った事態になってしまいます。子ノードが多いと大変です。)
この Frequency Agility は XBee の最新ファームウェアや NXP 社のプロトコルスタックでも実装されているようですが、(ここは私も今後の調査をしたいと思いますが)どうも自動的に動作するというよりも、上位から Management Network Update Request というコマンドを送ることで明示的に処理する必要があるのではないかと想像しています。
まとめ
まとめますと、このような通信方式や通信干渉への対策の違いがありますので、どのような用途にでも Bluetooth LE や ZigBee が容易に適用できるという訳ではなく、応用分野をきちんと検討し、可能な限りフィールド評価などによって技術選定や設計を進めるべきと考えます。(我田引水)